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資料館① 効かせる下段廻し蹴り

<効かせる下段廻し蹴り>
パワーのある下段廻し蹴りを出している人は、ほぼ無意識にやっているが、それを理論的に学ぶことでより効率的に強い下段蹴りを身に付けることが出来る。
一般的に、力強い効かせる蹴りを「重い」蹴りという表現をする。
ここに下段蹴りを効かせるポイントがある。
蹴りの力を増大させるために、単純に脚力を鍛えていたら、すぐに限界が来る。
現在、MAXスクワット200kg挙げる事の出来る人が、短期間に260kgを挙げるようになるのはまず不可能である。
最大筋力を上げるトレーニングでは、それこそグラム単位で薄いプレートを増やしていく地道な弛まぬ努力を必要とする。
つまり、筋力アップだけで蹴りのパワーを上げるのは実はとても難しい事である。
腰から上への蹴りの場合は、主に筋力の強さを使って蹴る。
特に上段蹴りは顎を捉えるとKOを生むが、それは筋収縮の早さによって出される速い蹴りによって可能となる。
が、筋収縮の早さという物は先天的な要素が占め、努力でそれを上回ることは難しい。
筋力自体を鍛えてパワーアップを図り、「重い蹴り」を出すのは上に述べたようにかなり困難である上、それだけの筋量、筋力を増やすには途方もない努力が必要な割には、増える最大筋力の大きさはたかが知れている。
下段廻し蹴りに関しては、蹴りのフォームが重要となり、それに関しての努力をすれば「重い」蹴りを出せるようになる。
下段廻し蹴りのポイントは、相手の腿に対して垂直に蹴りを当てた方がダメージを与えられると言われてきた。
勿論、ヒットする角度が90度からズレるほど、力が斜め方向に逃げて与えるダメージが小さくなる。
無論、組手中の体勢によっては斜めに押し込んだりするような蹴りが有効な場合もあるが、「効かせる」ことを第一に考えた場合には大腿四頭筋に垂直に当てる方が効果的である。
実際、構えた相手の腿は垂直ではなく、少し上向きに角度がつくので、垂直に蹴りを当てるには、少し落とし気味に蹴った方がよいと言われる。
しかし、落として蹴った方が効果的になる理由は角度のことだけではなく「重い」蹴りを出すために重要なポイントがそこにある。
理由は知らなくても、腿に蹴りを落とし気味に当てる事で「重い」蹴りを出せていた理由は、「重い」という感覚は重力が働いているから感じるものだという事である。
体重がある人の場合、その体重をぶつけるようにして蹴る方法も有効。
同じフォームでも体重のある人の蹴りは「重い」。
だったら蹴りを重くするためにはブクブクと太ればよいのか? 勿論、筋肉量が増える事で体重増量が得策だが、時間がかかる事である。
それよりフォームの修正で蹴りを重くする方が早道だし、それが技術の上達というものである。
当然、重力は上から下に働いている。
ということは、下から上に力を加えるよりも、上から下に蹴った方が楽に蹴れる。
それに加えて、上から蹴りを落とすことで、自分の体重を蹴りに載せる事が出来る。
体重が60kgしかない軽量級の選手であっても、自分の全体重を蹴り足に掛ければ、さっきの例で言えば、筋力増量では絶対無理な、自分の筋力に60kgプラスした「重い」蹴りを出すことが出来る。
想像して欲しい。
腿の上に60kgのバーベルシャフトが30cm上から落ちてきたとしたら、どれだけのダメージがあるのかを。
脛の外側は前脛骨筋が付くが、脛の内側部分は皮膚が薄く、脛骨が直接当たるといっても過言ではない。
その脛をバーベルのシャフトとして、相手の腿に落とす。
そして、単に落ちてきただけでもかなりのダメージになるところに、自分の筋力を加えて蹴り込むのだから、相当な威力の蹴りとなることは想像が付く。
ポイントは如何に蹴り足に体重を載せるかということだが、ほとんどの選手が力を入れて蹴ろうとすると、軸足にも力が入って突っ張ってしまう。
これは両足に同時に力が入るから。
余談だが、牛乳を飲む時に無意識的に腰に手を当てるのも、牛乳瓶を持った手と反対側の手も無意識的に同じ角度にしてしまうからである。
つまり、両足を左右で違う使い方をするのは意外と難しい。
中段以上の蹴りの場合は、蹴り足だけでなく軸足のバネを使って、伸び上がるように全身で蹴る方が威力のある蹴りを出すことが出来るが、下段の場合は寧ろ「脱力」が重要になって来る。
蹴り足を抱え込んで膝を高く上げた位置から、軸足の力を抜いて身体全体が下に落ちるのに合わせて、蹴り足の脛に全体重が掛かるように蹴る。
そう、バーベルシャフトを相手の腿の上に落とすように。
筋力で60kg以上のパワーアップは至難の技だが、蹴りのフォームに気を使うだけでそんなパワーのある蹴りを自分のものとすることが出来る。
もちろん脱力したままでは床に崩れ落ちてしまうから、落ちていく体重を踏み留める筋力が必要になる。
組手の体勢ならば落とす距離は30cmから多くても50cmくらいだから、タイミングさえ覚えれば誰にでも可能な技である。
ただ同じフォームで蹴ったならば、体重の重い人ほどパワーのある蹴りを出すことができるから、体重差のハンディは依然としてある。
しかし、それを無意識にできるのは才能に恵まれた一握りの人だけである。
もし意識してそれが使えるようになれば、かなりのハンディキャップを埋める事ができるようになるはずである。
但し、これは脛サポーターを使わないフルコンタクトルールの場合の話である。
もし、少年部のように脛サポーターで脛を覆った場合は、体重が載っても直接脛骨の部分が大腿四頭筋に当たらないので効果は薄くなる。
勿論、接近しないと上から落として蹴れないから、最初は近づいて当てる蹴り、相手の体勢を崩す蹴りから入る。
また、上から落とそうと見え見えで、足を矢鱈に上から落とそうとするとバレバレである。
だとするならば、いかにも中段を蹴るっていう振りからの下段蹴りの変化としても有効である。
要は、相手との間合いと蹴る角度の使い分けである。
変形バージョンとして、下段膝蹴りもある。
脛よりも膝を落とす、或いは膝をぶつけるから更に効く。
脛受けで、更に一歩踏み込んで相手内腿に故意に脛や膝を当てるのも効く。
要はルールの範囲内で頭使って工夫を凝らす事である。