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資料館A 道歌編
「道歌から知る美しい生き方」 生きる知恵がいっぱいの先人からの贈りもの
古武道の伝書には、数多くの道歌が残されています。しかし、その流派の武道を習っていない者が、その道歌の深い意味を理解することは不可能です。
さらに、もしも習っていたとしても、その理解の仕方が正しいかどうか、なかなか判断は難しいものです。 にもかかわらず、これから厚かましくも、道歌に関して思いついたままを書き綴ってみます。
ふしぎなる 極意ばかりを 尋ねつつ 表にあるを 知らぬはかなさ(制剛流)
まず最初に、この道歌を選んでみました。この道歌の中の、表というのは、表の型のことだと思います。極意は、初伝の表の型の中に全て含まれていると教えられます。
しかし、型を必死で覚え始めたころの初心者は、何が極意で、何が極意でないのか分かるはずがないのです。ですから、基本の技だけを何年か続けて教えられても、大抵は飽きてしまうか、その型の中に含まれている意味を、身体で理解しようとしなくなるようです。
それを意味飽和(身体にそれ以上染み込まない状態のことでしょうか)というような表現をしていた人がいました。
同じ動作を、何も考えずに、ただただ機械的に続けても、伝達系の「新しい回路」は開かれません。一回一回の動作を、吟味しながら、今までとは違うやり方を探してみることが必要です。
身体全体を統合して、力を生み出すやり方と、その力を出来る限り途中での消耗を少なくして伝えられる状態を、自分の中に探し、創り出さなければならないのです。
その回路がある程度できてくれば、相手から見ればきっと不思議な現象に見えるのでしょう。  少なくとも、相手と同じ程度の身体や意識の使い方をしていても、相手はちっとも不思議だとは、思ってくれないのです。少しは自分より鍛えているようだとしか思えないはずです。
勿論、出来るのを見せないようにする段階と、出来ないのは似て非なるものです。
ということは、自分が不思議にしか見えない状態では、まだまだ初心者でしかないと言えます。 ですから、不思議なる極意を尋ね続けているうちは、何時までたっても、どこに行っても初心者のままなのです。
ある程度にはできる先輩の使った技が、不思議ではなくなったところからが、本当の意味での入門を果たした状態といえるのではないでしょうか。ただし、それを体現出来るかどうかは、まだ別の問題です。
現代人の学習方法は、一つの問いに一つの答え、それを沢山早く覚えた方が、試験に勝てる。答えがいっぱいあったり、答えようのない問題を、試験には出しようがないのだから、そんなことを勉強する必要はない。そのような考え方が、合理的だと考えられているのではないでしょうか。
また、武道をさも科学的であるかのような説明をする人があります。しかし、科学的真理はどこまで行っても、概ね正しい状態でしかないのではないでしょうか。
人体だけを考えてみても、「液体なのか、固体なのか」、「自由に動くのか、動かない部位もあるのか」、「左右対称なのか、左右の重さも同じなのか違うのか」、さらに、個体差もあります。
その前提条件が異なると、その仮説は正確には成り立たないと思います。当然、自然現象と共通の現象も数多くあります。しかし、自然現象がすべて科学的に証明されているのでしょうか。
上達するためには、先生やできると思われる先輩から懸けられた技を、自分自身で再現する方法を見つけだす以外にはないのです。
他人がする説明は、その一部分でしか有りませんし、全く見当外れかもしれません。もっとも、少し上達した時点からみると、少々問題のある理論であっても、未熟な現時点ではとりあえず取り入れておくべき理論であることもあります。
「極意」ということばが、ある意味で妄想であることに気づくまでは、動作の意味を吟味できなくなる状態にならないように、自分自信の稽古を積み重ねることが大切です。
極意とて 別にはなきぞ 常によく 所作をからして 理を吟味せよ (和新心流居合)
極意とは 書物の外に あるものを 心に問ふて 業に知らせよ(関口流柔術)
われとわが 心に伝ふ 鍛錬に 妙も不思議も あるとしるべし(制剛流)
これらの道歌によりますと、どうも「極意」のようなものは存在するもののようです。しかし、書物には書かれていない、即ち不立文字のようですし、妙も不思議もあるのだとも詠まれています。
極意とは、「学問や技芸で、核心となる事柄。奥義。」、妙については、「なみはずれてすばらしいこと。また、そのさま。」あるいは、「不思議なこと。また、そのさま。」と説明されています。不思議については、「どう考えても原因や理由がわからないこと。」ということです。
極意や妙を探求するのは、どうも筍や玉葱の皮をむくような作業が必要なようです。そして、自分が無意識に重ねてきた癖を、一枚一枚剥ぎ取っていくしかないようです。
その過程としては、自分自身のセルフ(本来の自己、エゴではない)に尋ねて、業でチェックしていく他はないのでしょう。そのモニター役を稽古相手が務めてくれる訳です。
五ツある くせをばひとつ 直しつつ あとの四ツをば しだいしだいに  (竹内流)
しかし、実際は自分の癖を自覚できていないところから稽古を始めるのですから、自分の癖にどうすれば気づけるのかが、大きな問題になってきます。その事にすら、なかなか気づけないので、次にあげる道歌が生まれたのだと思います。
師につきて 年久しくと 言うとても まへの稽古の 仕様にぞよる (竹内流)
出来る限り、少ない刺激と運動量でしか、微妙な自分の身体の変化に気づくことはできません。意識と動作と呼吸を一致させた、身体全体を統合した動きを完成する為には、いわゆる数稽古やウエイト・トレーニングのような強い刺激だけを続けても、だめなのではないでしょうか。
そして、身体の動きが変化するにつれて、ものの見方や考え方まで、少しずつ変化していく可能性があるようです。
回数が重要なのではなく、一回一回の動きを初めてするつもりですること。少しだけ筋肉を緊張させるのは、その次に、リラックスするためだということを、意識することが大切なのです。
呼吸が乱れない程度に動作をやり終えたあと、ヨガでいうところの屍のポーズになり、休憩しながら、身体と床の接点との状態の変化を、しっかりと確認する為のシステムになっているのだと思われます。
ヨガにおいても、途中の複雑なポーズが目的ではなく、ポーズをして、緊張と弛緩を繰り返し、リラックスする。そのあとで、屍のポーズで休息をとりながら、チェックしていくシステムなのではないでしょうか。
是のみと 習一つに ちぢまりて おもひあやまる 兵法の道
いく度も 習の道を 改めて わが兵法に 心とどむな
兵法に 迷ふ心の 折々は 聞きし習の 跡をたづねよ
目に見えぬ 心の剣 あたらしく みがくや陰の 兵法の道
一みちを なかばもゆかで よの道を かへて行くほど 遠くなりなん
見は身の 主人とおもひ 定めつつ 少しもつかふ 事なかれただ
敵のうつ はやき太刀とて 恐るなよ 観の目付を 学びとりなば
雲霞 隔ててとほき 方だにも 観じてみれば 只せつななり
わが心 かがみの如く 磨きなば 敵の相形 皆移るべし
動きなき 心を思ひ 悟らずば 皆いたづらの 稽古なるべし
兵法の 習くもらぬ 月かげも にごる水には うつりかねつつ
おのづから 映らばうつる 映るとも 月も思はず 水も思はず
出でぬ間の 山のあなたを 思ひ遣る 心やさきに 月をみるらん 
気の前の はたらきといふ 習いこそ 上手の上の てだてなりけり
身は社 こころは神で 有りながら 外を尋ぬる おろかなりけり
むりにただ 力を頼む 人こそは 勝身にうとき 心なりけり (制剛流柔術)
忘れても 力いだすな いたずらに 敵の力ぞ 我が力なる (制剛流柔術)
捕られては 水に浮木の 身を持てよ 風にまかせつ 浪にまかせつ (楊心流)
やはらかに 敵のなす手に 任せつつ 後に勝こそ 陰中の陽  (制剛流柔術)
ひぎりとは けいこ修行を 能つとめ 非を知るときぞ 非切りなりけり(直心影流)
己が非を 知らでは人の 非は見えじ 人より先に 己が非を知れ (一刀流兵法 溝口派)
我身をば 水と思ひて 敵に非の ある所にて もれ入れて勝て(定善流)
身のかねの 位をふかく 習ふべし とめねどとまる 事のふしぎぞ (一刀流兵法 忠也派) 
位よく 道を正しく つとむれば とめねどとまる これ常の道 (楊心流)
目と心 足手のわざの そろいなば 敵に勝たずと 云うことぞなき (竹内流)
左右 後も前も 一致して 天地同根 万物一空 (直心正統一流)
所作を問ひ 心に答え ひとり行く
極意とて 別にきわまる こともなし 絶えぬ心の たしなみをいう
道という 言葉に迷う ことなかれ 朝夕おのが なす業としれ
井を掘りて 今一尺で 出る水を 掘らずに出ぬと いう人ぞ憂き
今今と 今という間に 今ぞなく 今という間に 今ぞ過ぎ行く
成るように 成ろうと言うは 捨て言葉 ただ為すように 成ると思えや
器用さと 稽古と好きの その内で 好きこそものの 上手なりけれ
何ごとも 目に見たことを 本(ほん)とせよ 聞きぬることは 変わる世の中
楽せんと 楽する楽は 楽ならず 楽は苦の種 苦は楽の種
われとわが 心折々 省みよ 知らず知らずも 迷うことあり
花咲くは 実のなるためぞ 花にのみ 心やつして 実をば忘れな
慎みを 人の心の 根とすれば 言葉の花も 誠にぞ咲く
人の非は 非とぞ悪(にく)みて 非とすれど わが非は非とぞ 知れど非とせず
角もあれ 丸くもあれよ 人心 物に従い 事に応じて
人の世は われを何とも 言わば言え わが為すことは われのみぞ知る
何ごとも われ知り顔の 口たたき 詰めたる樽は 鳴らぬものかな
語るなと 人に語れば その人は また語るなと 語る世の中
恐るべき 鎗(やり)より怖き 舌の先 これがわが身を つき崩すなり
今日ほめて 明日悪く言う 人の口 泣くも笑うも うその世の中
慈悲じゃとて 施すものは 虚栄心 受ける者には 増す依頼心
稽古とは 一より習い 十を知り 十より返る もとのその一
習いつつ 見てこそ習え 習わずに よし悪し言うは 愚かなりけり
我を捨てて 人に物問い 習うこそ 知恵を求むる 秘法なりけり
古の 道を聞いても 習うても 身の行いに せずば甲斐なし
ためになる ことを言う者 忌み嫌い 毒をあてがう 人が好きなり
笛吹かず 太鼓たたかず 獅子舞の 後足になる 人もあるなり
わが身だに わがままならぬ 世の中に 思うままには ならぬ世の中
思うこと ひとつかなえば またひとつ かなわぬことの あるが世の中
ぶらぶらと 暮らすようでも ひょうたんは 胸のあたりに 締めくくりあり
痛き鍼 苦き薬に 熱き灸 苦しまんより かねて慎め
「利休道歌」 阿部宗正著から抜粋してご紹介します。
規矩作法 守りつくして 破るとも はなるるとても 本を忘るな
その道に 入らんと思ふ 心こそ 我が身ながらの 師匠なりけれ
上手には すきと器用と 功積むと この三つそろふ 人ぞ能くしる
点前には 強みばかりを 思ふなよ 強きは弱く 軽く重かれ
何にても 道具扱ふ たびごとに 取る手は軽く 置く手重かれ
濃茶には 点前をすてて 一筋に 服の加減と 息をちらすな
とにかくに 服の加減を 覚ゆるは 濃茶たびたび 点てて能くしれ
何にても 置き付けかへる 手離れは 恋しき人に わかるると知れ
湯を汲みて 茶碗に入るる 其時の 柄杓のねぢは 肱(ひじ)よりぞする
茶を振るは 手先をふると 思ふなよ 臂(ひじ)よりふれよ それが秘事なり
右の手を 扱ふ時は わが心 左の方に あるとしるべし
なまるとは 手つづき早く 又おそく ところどころの そろはぬをいふ
茶の湯をば 心に染めて 眼にかけず 耳をひそめて きくこともなし
目にも見よ 耳にもふれよ 香を嗅ぎて ことを問ひつつ よく合点せよ
習ひをば ちりあくたぞと 思へかし 書物は反故 腰張にせよ
柳生宗厳(石舟斎)兵法百首
世をわたる わざのなきゆへ 兵法を かくれがとのみ たのむ身ぞうき
[世を渡る わざの無き故 兵法を 隠れ家とのみ たのむ身ぞ憂き]
かくれがと たのむはよしや 兵法の あらそひごとは むよう成けり
[隠れ家と たのむはよしや 兵法の 争いごとは 無用成りけり]
[よしや=やむをえない]
兵法の かちをとりても 世のうみを わたりかねたる 石のふねかな
[兵法の 舵(勝ち)をとりても 世の海を 渡りかねたる 石の舟かな]
兵法を かねてこちきとおもはずば あらそひゆへに たたかれやせん
[兵法を かねて乞食と思わずば 争いゆえに たたかれやせん]
[ たたくる=めちゃくちゃにされる]
しあひして うたれて恥の 兵法と 心にたへず くふうしてよし
[仕合して 打たれて恥の 兵法と 心に絶えず 工夫して良し]
兵法は 能なきものの わざなれば かうぎやうけんくわの もとひ成けり
[兵法は 能無き者の わざなれば 口業喧嘩の 元成りけり]
兵法の ならひはうとく きろきろと めくばりまでを するぞおかしき
[兵法の 習いは疎く きょろきょろと 目配りまでを するぞおかしき]
まる太刀を けいこなくして 兵法の 調子の手きき ならじとぞおもふ
[円太刀を 稽古なくして 兵法の 調子の手利き ならじとぞ思う]
兵法を しりたるよしの 手柄たて しらぬにおとる せうし成けり
[兵法を 知りたるよしの 手柄立て 知らぬに劣る 笑止なりけり]
兵法は うかまぬ石の ふねなれど すきのみちには すてられもせず
[兵法は 浮かまぬ石の 舟なれど 好きの道には 捨てられもせず]
二こしを さげたる人の 兵法を いらぬというぞ 心もとなき
[二腰を さげたる人の 兵法を 要らぬというぞ 心許なき]
[二腰=侍が腰におびる大小の二刀]
兵法を 心にかけぬ そのひとの かたなのよしあし ほり出しの用
[兵法を 心にかけぬ その人の 刀の良し悪し 掘り出しの用]
きりあひは こころのてうし ある物を かまへによると いふぞはかなき
[截り合いは 心の調子 ある物を 構えによると 云うぞはかなき]
[はかなき=果無き=結実していない]
世にふしぎ 奇妙おほきぞ 能ならへ ならふてはちに ならぬへいほう
[世に不思議 奇妙多きぞ 能く習え 習うて恥(罰)に ならぬ兵法]
ま太刀かたな それのみならず よけはづし 心にかけて きづかいをせよ
[太刀 刀 それのみならず よけ外し 心にかけて 気遣いをせよ]
兵法の 極意はよろづ なにごとも しあん遠慮の よけはづし也
[兵法の 極意は万 何事も 思案遠慮の よけ外しなり]
[遠慮=遠い先々まで考えること]
兵法や こしのかたなも あひおなじ 朝夕いらで いることもあり
[兵法や 腰の刀も 相同じ 朝夕いらで いることもあり]
へいほうは けいこたんれん つねにして いろにいださで かくしつつしめ
[兵法は 稽古鍛錬 常にして 色に出さで 隠し慎め]
兵法を かつて心に かけずして いちごかたなの人足やせん
[兵法を 勝って心にかけずして 一期刀の人足やせん]
[一期=一生涯、人足=労働者、せん=せむ=する]
兵法を しらざる人の こしかたな ながきをたのむ よしやこと
[兵法を 知らざる人の 腰刀 長きをたのむ よしやこと]
[よしや=仕方がない]
兵法の いたれるうへの こころにも やりをぐそくの 第一とあり
[兵法の 至れる上の 心にも 槍を具足の 第一とあり]
[具足=所持する道具]
兵法の ならひはいち二 たいがひぞ あまりすきたる 事はならぬぞ
[兵法の 習いは一二 たいがいぞ あまり過ぎたる 事はならぬぞ]
[一二=ひとつふたつ・わずか、たいがい=ほどほどに]
たばかりと 矢とめかうおく 長具足 たぜひにぶぜひ 兵法のほか
[謀りと 矢とめ剛臆 長具足 多勢に無勢 兵法のほか]
[矢とめ=飛んでくる矢をとめること、剛臆=剛気と怯気、長具足=槍・薙刀などの長道具]
兵法の ならひのうへの こころにも かくすをひぢの だい一とする
[兵法の 習いの上の 心にも 隠すを秘事の 第一とする]
兵法に 調子のありと ならひても あふてはづるる 心よくとへ
[兵法に 調子の有りと 習いても おうて外るる 心よく問え]
兵法の あらそひ事も よくゆへと 心にこころの 師となりてしれ
[兵法の 争い事も 欲ゆえと 心に心の 師となりて知れ]
へい法の 文字をおもへば なにがしの こころかけぬも おろかなりけり
[兵法の 文字を思えば なにがしの 心かけぬも おろかなりけり]
[おろか=疎か・愚か=中身が足りない・程度が劣る]
上手には 兵法のみか 六芸の けいこなくして きとくやはある
[上手には 兵法のみか 六芸の 稽古なくして 奇特やわある]
[六芸=中国周代に士が習うべきとされた六種の技芸、やわある=あるだろうか(いやない)]
へいほうの ならひそのおり いでざると かたるはをのが はぢとしらずや
[兵法の 習いその折り 出ざると 語るは己が 恥と知らずや]
兵法の 極意に心 いたりなば かたなだうぐも およばざるもの
[兵法の 極意に心 至りなば 刀道具も 及ばざるもの]
兵法の かまへさそくは とにもあれ かつはこころの つもり成けり
[兵法の 構えさそくは とにもあれ 勝つは心の つもりなりけり]
[さそく=早速=機に臨み素早く対応する、または早足=早い足さばき]
兵法は こころゆるさで 気をつかひ みみにたつなる ことばすごすな
[兵法は 心許さで 気を遣い 耳に尋なる 言葉過ごすな]
へいほうは まづなにがしの やくにして 心にかけて ならひつつしめ
[兵法は 先ずなにがしの 厄にして 心にかけて 習い慎め]
兵法の けいこに手刀 とる事は もしかなはざる おものようなり
[兵法の 稽古に手刀 とる事は もしかなわざる 重の用なり]
無刀にて きはまるならば 兵法者 こしのかたなは むよう成けり
[無刀にて きわまるならば 兵法者 腰の刀は 無用なりけり]
手刀をば きりてかひなし とられては いちご手なしの ふるや入なん
[手刀をば 切りて甲斐なし とられては 一期手無しの ふるや入りなん]
[いちご=一期=最期の覚悟?、ふる=触れる?]
無刀にて けいこたんれん 取えては わが兵法の くらゐをぞしる
[無刀にて 稽古鍛錬 取りえては わが兵法の 位をぞ知る]
へいほうは きようによらず 其人の すける心の たしなむにあり
[兵法は 器用によらず 其の人の すける心の たしなむにあり]
[好ける心の嗜む=興味を持ち心をこめて励む ]
てうぶくの 二字のこころを 兵法の ごくいとつねに くふうしてよし
[調伏の 二字の心を 兵法の 極意と常に 工夫して良し]
[調伏=(仏教語で)心身をととのえて、悪行を制する]
自是(これより)ト清十首
兵法の 奥よりおくの ならひこそ ただがうおくの ふたつ成けり
[兵法の 奥より奥の 習いこそ ただ剛臆の 二つなりけり]
なぎなたの ひらめく影と かま鑓の かかるしあひは 見るも目ざまし
[長刀の ひらめく影と かま鎗の かかる試合は 見るも目ざまし]
弁慶が うしわか殿を よきしうと たのみし事も 兵法のとく
[弁慶が 牛若殿を 良き主と たのみし事も 兵法の徳]
兵法は こころのおくの 太刀なれば ときにしたがふ 寸尺ぞかし
[兵法は 心の奥の 太刀なれば 時にしたがう 寸尺ぞかし]
[寸尺=長さ、かし=意味を強める終助詞=〜よ]
弓やむま 兵法たのむ なにがしの こころのうちぞ ゆかしかりける
[弓や馬 兵法たのむ 何某の 心のうちぞ ゆかしかりける]
[ゆかし=知りたい]
あづさ弓 もとすえしらぬ 兵法者 そらうてこひて けかをまくるな
[梓弓 本末知らぬ 兵法者 そらうてこいて けかをまくるな]
兵法の こころなくして さすかたな ものきれなりと たのみすくなし
[兵法の 心無くして 差す刀 物切れなりど たのみ少なし]
万法を きりはらふべき 一心の つるぎもむねの 兵法ぞかし
[万法を 切り払うべき 一心の 剣も胸の 兵法ぞかし]
[かし=意味を強める終助詞=〜よ]
兵法の こころのおくを 伝ずば いんかをとりて 何かはせん
[兵法の 心の奥を 伝えずば 印可をとりて いずれかはせん]
命とて おもきたからを 持人の 兵法をして 蔵にせよかし
[命とて 重き宝を 持つ人の 兵法をして 蔵にせよかし]
身にかへて 名のため思ふ なにがしの 兵法すかぬ 人しやはある
[身にかえて 名のため思う 何某の 兵法好かぬ 人しやはある]
[人しやはある=人などいるだろうか]
兵法に さそく奇妙の かるわざは 弟子のおよばぬ ならひ成けり
[兵法に 早速奇妙の 軽業は 弟子の及ばぬ 習いなりけり]
[さそく=早速=機に臨み素早く対応する、奇妙=すぐれていること]
兵法に 余流をそしる 其人は ごくいいたらぬ ゆへとこそしれ
[兵法に 余流をそしる 其の人は 極意至らぬ 故とこそ知れ]
兵法の 極意は五常の 義に有と こころのおくに 絶ずたしなめ
[兵法の 極意は五常の 義に有りと 心の奥に 絶えずたしなめ]
[五常=儒教の五つの道徳・一般には 仁・義・礼・智・信]
兵法を なげくはけなげ 中道に ぎりのこころの ふかきゆへなり
[兵法を 嘆くは健気 中道に 義理の心の 深き故なり]
[中道=中正な立場]
兵法は かくすを奥儀 極意とぞ しらぬがおもてに いだすこころは
[兵法は 隠すを奥義 極意とぞ 知らぬが面に 出す心は]
兵法は しりてもしらぬ よしにして いる折々の 用にしたがへ
[兵法は 知りても知らぬ よしにして いる折々の 用にしたがえ]
[よし=そぶり]
兵法を しりたる顔の 色にいで にくきふりのみ する人ぞうき
[兵法を 知りたる顔の 色に出で にくきふりのみ する人ぞ憂き]
[にくき=不愛想な]
兵法を 知りたる人を うやまふは たしなみふかき こころ成けり
[兵法を 知りたる人を 敬うは たしなみ深き 心なりけり]
兵法に すかざる人は わけしらで くゐなばこころ おろかなるゆへ
[兵法に 好かざる人は わけ知らで 悔いなば心 おろかなるゆえ]
[わけ=物事の道理、おろか=疎か・愚か=中身が足りない・不十分・程度が劣る]
兵法は 弟子の心を さぐりみて 極意おろかに つたえはしすな
[兵法は 弟子の心を さぐりみて 極意おろかに伝えはしすな]
[おろか=疎か=通り一遍]
兵法を 工夫のゆへか 無刀にて あらそひかくる 積りをぞしる
[兵法を 工夫の故か 無刀にて 争いかくる 積もりをぞ知る]
兵法は かなはぬ折の 身のためと こころにかけて 稽古能せよ
[兵法は かなわぬ折りの 身のためと 心にかけて 稽古能くせよ]
はんのうへ あだなる事の 勝負も まけて兵法に はらのたたずや
[煩悩へ あだなる事の 勝ち負けも まけて兵法に 腹の立たずや]
なにがしか しらでかなはぬ 兵法を こころがけぬも おろか成けり
[なにがしか 知らでかなわぬ 兵法を 心がけぬも おろかなりけり]
[おろか=疎か・愚か=中身が足りない・不十分・程度が劣る]
名おしみ兵法なげく なにがしと ききしる人に 極意のこすな
[名を惜しみ 兵法嘆く なにがしと 聞き知る人に 極意残すな]
よのふと おもふ心の おろかゆへ 兵法くらゐの あらそひぞする
[良き能と 思う心の 愚かゆえ 兵法 位の 争いぞする]
兵法は ふかき淵瀬の うす氷 わたるこころの ならひ成けり
[兵法は 深き淵瀬の 薄氷 渡る心の 習いなりけり]
兵法の 無刀となること 石のふね うかまぬわざと 人やみるらん
[兵法の 無刀となること 石の舟 浮かまぬ業と 人や見るらん]
しばりもの きる程やすき 兵法と いふはあだなる 人のことのは
[縛り者 截るほど易き 兵法と 云うは徒なる 人の言の葉]
しばりもの きるにおとらぬ 無刀さへ 十に五つは とられぬるかな
[縛り者 截るに劣らぬ 無刀さえ 十に五つは とられぬるかな]
無刀とる つもり位を 稽古して 小太刀のこころ がんみしてしれ
[無刀とる 積もり位を 稽古して 小太刀の心 玩味して知れ]
手刀をば 所望とあらば 取てみよ きられてもよし くるしからざる
[手刀をば 所望とあらば 取りてみよ 截られてもよし 苦しからざる]
無刀さへ きりかねたらん 其人の かたなにあひて いかがしてまし
[無刀さえ きりかねたらん その人の 刀にあいて いかがしてまし]
[〜まし=〜たらよいだろうか]
兵法の 極意に心 いたりなば いちごみさほの 命ならまし
[兵法の 極意に心 至りなば 一期操の 命ならまし]
[一期=一生涯、操=平気でいられる、ならまし=〜だろう]
身命の まもりとつかふ 兵法の はつとを人の おこなはぬぞうき
[身命の 護りと遣う 兵法の 法度を人の 行わぬぞ憂き]
[法度=掟・決まり]
つはものの 法と書たる 兵法を いらぬといふも 無念ならずや
[つわものの 法と書きたる 兵法を 要らぬと云うも 無念ならずや]
[無念=無我の境地、無念ならずや=無念ではないのか(いや無念である)]
兵法の 師となるならば 弟子にまづ はつとををしへ 心よくみよ
[兵法の 師となるならば 弟子に先ず 法度を教え 心よく見よ]
[法度=掟・決まり]
兵法に ふしぎ奇妙は おほき世を はれのみと思ふ 智恵ぞはかなき
[兵法に 不思議 奇妙は 多き世を われのみと思う 智恵ぞはかなき]
兵法の ようをば内に つつしみて 礼儀の 二つに 心みだすな
[兵法の 用をば内に 慎みて 礼儀の 二つに 心乱すな]
新陰を 余流となすと 兵法に きめうのあらば 習たづねん
[新陰を 余流となすと 兵法に 奇妙のあらば 習い尋ねん]
兵法に 積くらゐを ならひとへ まほうにこころ かけな行末
[兵法に 積もり位を 習い問え 魔法に心 かけな行く末]
[かけな=かけるな]
兵法は たんれんかるわざ 其外に 奇妙のこころ 弟子にならばや
[兵法は 鍛錬軽業 その外に 奇妙のこころ 弟子にならばや]
[弟子にならばや=弟子にならなければ?]
兵法は 利かたと聞ば すこしにも ききしる徳を 何にたとへん
[兵法は 利方と聞かば 少しにも 聞き知る徳を 何にたとえん]
[利方=利のある方法、便利なやりかた]
我太刀に 我と非を打 工夫して つもり位の こころよくしれ
[我が太刀に 我れと非を打ち 工夫して 積もり位の 心よく知れ]
ぎり情 ふかき弟子にと 兵法の 極意をおしみ ひじやはたさん
[義理情け 深き弟子にと 兵法の 極意をおしみ 秘事や果たさん]
兵法を ならひ其身のふりかかり こころ言葉に 気遣をせよ
[兵法を 習い其の身のふりかかり 心言葉に 気遣いをせよ]
たびにして 勝と計の 兵法は いづれも地うち とたん成けり
[度にして 勝つとばかりの 兵法は いずれも地うち とたんなりけり]
[とたん=土壇=処刑場?]
人をきらん 心はしばし 兵法に われが討たれぬ ならひまでして
[人を斬らん 心はしばし 兵法に 我れが討たれぬ 習いまでして]
兵法を へたぞとあらば あらそはで よにしんかうの 人にをしへよ
[兵法を 下手ぞとあらば 争わで 世に新興の 人に教えよ]
いのち身を すなをと習 兵法は しらはのしあひ さたぞことなる
[命身を 素直と習う 兵法は 白刃の試合 沙汰ぞ異なる]
おんりやうや けうけんしやうは 新陰の 兵法のはつと 極意成けり
[温良や 恭倹譲は 新陰の 兵法の法度 極意なりけり]
[温良=おだやかで素直、恭倹譲=おだやかでうやうやしく、ひかえめなこと]
兵法は かくしつつしむ 心より まさる極意は あらじとぞ思ふ
[兵法は 隠し慎む 心より 勝る極意は あらじとぞ思う]
つつしまず 兵法面に 出しなば 人ににくまれ はぢやかくらん
[慎まず 兵法おもてに 出だしなば 人に憎まれ 恥やかくらん]
兵法の 利かたそれぞれ かぞふれば おほいなるかな けんこんの徳
[兵法の 利方それぞれ 数うれば 大いなるかな 乾坤の徳]
[利方=利のある方法、乾坤=天と地・陰陽]
世をたもち 国のまもりと 成人の こころに兵法 つかはぬはなし
[世を保ち 国のまもりと なる人の 心に兵法 遣わぬはなし]
兵法の あらそひ位は 小太刀にて たがひの弟子を ぜひしくらべよ
[兵法の 争い位は 小太刀にて 互いの弟子を 是非し比べよ]
兵法の 弟子をしたてぬ 師にあらば 花実をかねぬ 上手成けり
[兵法の 弟子を仕立てぬ 師にあらば 花実をかねぬ 上手なりけり]
兵法師 仁に心の なかりせば くらゐ上手の かひはあらじな
[兵法師 仁に心の なかりせば 位上手の 甲斐はあらじな]
兵法の 極意に仁・義・礼・智・信 たへずたしなみ 機遣をせよ
[兵法の 極意に仁・義・礼・智・信 絶えずたしなみ 気遣いをせよ ]
つなづねに 五常の心 なき人に 家法の兵法 印可ゆるすな
[常々に 五常の心 無き人に 家法の兵法 印可ゆるすな]
兵法の 上手はだうり ただしくて 目つけさぞさぞ なりやすきやう
[兵法の 上手は道理 正しくて 目付けさぞさぞ なりやすきよう]
うかまざる 兵法ゆへに 石の舟 くちぬうき名や すえにのこさん
[浮かまざる 兵法故に 石の舟 朽ちぬうき名や 末に残さん]
合気にてよろず力を働かし美しき世と安く和すべし
ありがたや伊都とみづとの合気十ををしく進め瑞の御声に
あるとあれ太刀習って何かせん唯一筋に思ひ切るべし
神ながら合気のわざを極むれば如何なる敵も襲うすべなし
神ながら天地のいきにまかせつつ神へのこころをつくせますらを
下段をば陽の心を陰に見て打突く剣を清眼と知れ
向上は秘事も稽古もあらばこそ極意のぞむな前ぞ見えたり
左右をば切るも払うも打ち捨てて人の心は直ぐに馳せ行け
上段は敵の心を踏定め陰の心を陽にこそ見れ
上段は吾も上段このままに打突く槍をくつして勝つべし
すきもなくたたきつめたる敵の太刀皆打ちすてて踏込て切れ
前後とは穂先いしづき敵ぞかし槍をこたてに切り込み勝つべし
せん太刀を天に構へて早くつめ打逃しなば横に切るべし
太刀ふるひ前にあるかと襲ひ来る敵の後に吾は立ちけり
立ちむかふ剣の林を導くにこたては敵の心とぞ知れ
魂のあか破れ衣をとりのぞき天の運化に開き光れよ
中段は敵の心をその中にうつり調子を同じ拳に
敵多勢我をかこみて攻むるとも一人の敵と思ひたたかえ
敵下段同じ構への中段に上り下りに移りかむるな
敵の太刀弱くなさむと思いなばまづふみ込みて切るべし
敵人の走り来りて打つときは一足よけてすぐに切るべし
取りまきし槍の林に入るときはこだては槍の穂先とぞ知れ
人は皆何とあるとも覚悟して粗忽に太刀を出すべからず
日々のわざの稽古に心せよ一を以て萬に当るぞ武夫の道
武術とは神の御姿御心ぞいづとみづとの御親尊し
ふりまはす太刀に目付けて何かせん拳は人の切るところたれ
まが敵に切りつけさせて吾が姿後に立ちて敵を切るべし
誠をば更に誠に練り上げて顕幽一如の真諦を知れ
又しても行詰るたびに思ふかないづとみづとの有難き道
まよひなば悪しき道にも入りぬべし心の駒に手綱ゆるすな
右手をば陽にあらわし左手は陰にかえして敵をみちびけ
道のためまがれる敵をよびさまし言むけすすめ愛の剣に
無明とは誰やの人が又月のいづるも入るも知る人ぞなし
物見をばやといふ声を拍子つつ敵の拍子にうつりかはるな
山水にあたりて立たぬ岩声こそ清くことふる人もなければ
世の初め降り給ひし璽鏡剣国を建てます神の御心
世の初め降り給ひし武の使命国の守りと君の御声に
呼びさます一人の敵も心せよ多勢の敵は前後左右に
合気とは愛の力の本にして愛はますます栄えゆくべし
合気とは神の御姿御心ぞいづとみづとの御親とほとし
合気とは筆や口にはつくされず言ぶれせずに悟り行へ
合気とは解けばむつかし道なれどありのままなる天のめぐりに
合気とは万和合の力なりたゆまずみがけ道の人々
朝日さす心もさえて窓により天かけりゆく天照るの吾れ
天かけり光の神は降りたちぬかがやきわたる海の底にも
天かけりやみを照らして降りたちぬ大海原はよろこびの声
天照すいづ輝くこの中に八大力王の雄叫びやせん
天地に気結びなして中に立ち心構えは山彦の道
天地の精魂凝りて十字道世界和楽のむすぶ浮橋
いきいのち廻り栄ゆる世の仕組たまの合気は天の浮橋
一靈の元の御親御姿は響き光りてぞ生れし言靈
伊都のをのこり靈はらう伊都魂を光の中にたける雄武び
古より文武の道は両輪と稽古の徳に身魂悟りぬ
現し世と神や仏の道守る合気の技は草薙ののり
美(うるわ)しきこの天地の御姿は主の造りし一家なりけり
大御神七十五声を生みなして世の経綸をさづけ給へり
大御親七十五ツの御情動に世のいとなみはいや栄えぬる
教には打突拍子さとく聞け極意のけいこ表なりけり
己が身にひそめる敵をエイと切りヤアと物皆イエイと導け
おのころに気結びなして中に立つ心みがけ山彦の道
おのころに常立なして中に生く愛の構えは山びこの道
かんながら赤白玉やますみ玉合気の道は小戸の神技
かんながら練り上りたる御剣はすめよ光れよ神の恵みに
気の御わざおろちの靈出や蜂の靈出たまのひ出ふる武産の道
気の御わざ玉のしづめやみそぎ技導き給へ天地の神
くわしほこちたるの国の生魂やうけひに結ぶ神のさむはら
声もなく心も見えず神ながら神に問はれて何物もなし
ことだまの宇内にたぎるさむはらの大海原は山彦の道
こんげんの気はみちみちてけんこんや造化もここにはじめけるかな
三千世界一度に開く梅の花二度の岩戸は開かれにけり
三千年の御親の仕組成り終えぬよさしのままに吾はしとめん
松竹梅錬り清めゆく気の仕組いつここに生るや身変るの水火
真空と空のむすびのなかりせば合気の道は知るよしもなし
すさの男の玉の剣は世にいでて東の空に光り放てり
主の至愛ひびき生れし大宇宙御いとなみぞ生れ出てたる
主の御親至愛の心大みそら世のいとなみの本となりぬる
すみきりしするどく光る御心は悪魔の巣くふすきとてもなし
生死とは目の前なるぞ心得て吾ひくとても敵は許さじ
大宇宙合気の道はもろ人の光となりて世をば開かん
武産は御親の火水(いき)に合気してその営は岐美の神業
たたえてもたたえ盡せぬさむはらの合気の道は小戸の神技
千早ぶる神の仕組みの愛気十八大力の神のさむはら
つきさかきこり靈はらふいずのめのみ親かしこし神のさむはら
常々の技の稽古に心せよ一を以て万にあたるぞ修業者の道
つるぎ技筆や口にはつくされず言ぶれせずに悟り行へ
天地人合気になりしいづの道守らせ給え天地の神
天と地と神と人とをむつましく結び合はせてみ代を守らん
道人のするどく光る御心は身魂の中にひそむ悪魔に
時は今天火水地や玉の緒の筋を正して立つぞ案内に
日地月合気になりし橋の上大海原はやまびこの道
火と水の合気にくみし橋の上大海原にいける山彦
日々に鍛えてはまたまたにこり雄叫びせんと八大力王
ふとまにと神習ひゆくみそぎ業神の立てたる合気なりけり
正勝吾勝御親心に合気してすくい活かすはおのが身魂ぞ
まねきよせ風をおこしてなぎはらいねり直しゆく神の愛気に
むらきもの我れ鍛えんと浮橋にむすぶ真空神のめぐみに
世を思い嘆きいさいつまた奮いむら雲の光はわれに勝速日して
世の仕組国のみ親の命もて勝速日立つ天の浮橋
世の中を眺めては泣きふがいなさ神の怒りに我は勇みつ
呼びさます一人の相手も心せよ一を以て万に当る丈夫の道
よろづすぢ限り知られぬ合気道世を開くべく人の身魂に
取りまきし槍の林に入るときはこだては己れが心とぞしれ
教えに打ち突く拍子さとくきけ極意の稽古表なりけり
丈夫の敵に向かひしそのときは万法すべて文となりとぐ
呼びさます一人の敵も心せよ一を以て万に当たるぞ丈夫の道
あかき血に仕組む言靈此妙技もちろと○を出だしてぞ生む
天地は汝れは合気とひびけども何も知らずに神の手枕
いきをうけいきをばたてるもののふは愛をいのちと神のさむはら
緒結びの七十五つの御姿は合気となりて世をば清めつ
声も見ず心も聞かじつるぎわざ世を創めたる神に習ひて
すの御言五十鈴の姿いろはうた大地の上を正すさむはら
魂のあか破れ衣をとりのぞき天の運化に開き光れよ
天地人和合の守り合気道大海原は祝ぎの音
天地人和楽の道の合気道大海原に生ける山彦
日々に鍛えて磨きまたにごり雄叫びせんと八大力王
武とはいえ声もすがたも影もなし神に聞かれて答うすべなし
みちたりし神の栄えの大宇宙二度の岩戸は天の浮橋
六合の内限りなくぞかきめぐりきよめの道はさむはらのほこ
◎二刀流兵法問答
 稽古おば 疑ふほどに 工夫せよ 解りたるあとが 悟りなりけり
 うかうかと 吟味もなくて 習ふをば 何を相手に 教ふべきかは
◎竹内流
 師の口伝 いかに細かく 得たりとも 業がならずば 役にたつまじ
 師の伝を 受くるばかりを 頼みなば 成就しがたき 工夫鍛練
 兵法は 師伝をはなれ わが理をも つくるほどなる 人ぞこのもし
 五ツある くせをばひとつ 直しつつ あとの四ツをば しだいしだいに
 師につきて 年久しくと 言うとても まへの稽古の 仕様にぞよる
 目と心 足手のわざの そろいなば 敵に勝たずと 云うことぞなき
 わが心 かがみの如く 磨きなば 敵の相形 皆移るべし
 身は社 こころは神で 有りながら 外を尋ぬる おろかなりけり
◎楊心流
 天心の 誠の外に 物なきに おのが心で おのがたづぬる
 捕られては 水に浮木の 身を持てよ 風にまかせつ 浪にまかせつ
 位よく 道を正しく つとむれば とめねどとまる これ常の道
◎制剛流
 むりにただ 力を頼む 人こそは 勝身にうとき 心なりけり
 ふしぎなる 極意ばかりを 尋ねつつ 表にあるを 知らぬはかなさ
 やはらかに 敵のなす手に 任せつつ 後に勝こそ 陰中の陽
 忘れても 力いだすな いたづらに 敵の力ぞ 我が力なる
 われとわが 心に伝ふ 鍛錬に 妙も不思議も あるとしるべし
 動きなき 心を思ひ 悟らずば 皆いたづらの 稽古なるべし
◎小栗流
 身は投げず 心は投げず 気は投げず 己とあゆむ 道をしるべし
◎山岸流居合
 身のかねの 位を深く 習うべし とめねどとまる 事はふしぎや
◎宝蔵院流
 所作を問ひ 心に答へ ひとり行く 道を知らずば 妙は有るまじ
◎新陰流
色につき 色に随ふ 風情こそ これ新陰の 心なりけれ
歩みにも 深き習いの 有るぞかし 知らねば迷ふ けふの細道
西江は 指先までも あるぞかし 先ず習ふには 所ありけり
西江を たもちて行かば やすやすと 動き一つの 勝になりけり
気の前の はたらきといふ 習いこそ 上手の上の てだてなりけり
おのづから 映らばうつる 映るとは 月も思はず 水も思はず
出でぬ間の 山のあなたを 思ひ遣る 心やさきに 月をみるらん
余の人に 勝れて知らば また人を 教へ育てて 我が友となせ
己が非を 知らでは人の 非は見えじ 人よりさきに 己が非をしれ
左右 後も前も 一致して 天地同根 万物一空
ひぎりとは 稽古修行を 能つとめ 非を知る時ぞ 非切なりけり
得手不得手 不得手の事に 数をかけ 後は不得手も 得手と成るべし
極意とて 別にはなきぞ 常によく 所作をからして 理を吟味せよ
極意とは 書物の外に あるものを 心に問ふて 業に知らせよ
兵法に 迷ふ心の 折々は 聞きし習の 跡をたづねよ
いく度も 習の道を 改めて わが兵法に 心とどむな
是のみと 習一つに ちぢまりて おもひあやまる 兵法の道
一みちを なかばもゆかで よの道を かへて行くほど 遠くなりなん
常に身の 非を討つ太刀と 工夫せば ひとりけいこは つきぬ兵法
理が過ぎて 非に成るものぞ 兵法は 所作の稽古を まずはげむべし
かたちには 器用不器用 あらばあれ 真実ふかき 人は至らん
身の内の 七つの力 和合して 打ける太刀の 弱からんやわ
気と力 心につれて 打つ太刀は 春のいとゆふ(陽炎) 秋の稲づま
足手より 動きたちたる 兵法は まよふ心の やみうちとしれ
目に見えぬ 心の剣 あたらしく みがくや陰の 兵法の道
気は早く 心は静か 身は軽く 目は明らかに 業ははげしく
相気をば 避けて勝つべき 道なるに 何とて松の 風にさわげる
待ちもすな 懸る心も さだむなよ 味は敵より 出る物なり
見は身の 主人とおもひ 定めつつ 少しもつかふ 事なかれただ
雲霞 隔ててとほき 方だにも 観じてみれば 只せつななり
敵のうつ はやき太刀とて 恐るなよ 観の目付を 学びとりなば
兵法の 習くもらぬ 月かげも にごる水には うつりかねつつ
兵法は 只よく負けて 敵になほ うたるる中に 勝口をしれ
うす氷 ふむさかいある 勝口を 破り破るな 兵法のみち
名人と 仁者に敵は よもあらじ なにか天理の 外に求めん
兵法を われ知り顔に いひなすも 身の程見えて 恥しき物
極意とて 別にきわまる こともなし 絶えぬ心の たしなみをいう
道という 言葉に迷う ことなかれ 朝夕おのが なす業としれ
井を掘りて 今一尺で 出る水を 掘らずに出ぬと いう人ぞ憂き
今今と 今という間に 今ぞなく 今という間に 今ぞ過ぎ行く
成るように 成ろうと言うは 捨て言葉 ただ為すように 成ると思えや
器用さと 稽古と好きの その内で 好きこそものの 上手なりけれ
何ごとも 目に見たことを 本(ほん)とせよ 聞きぬることは 変わる世の中
楽せんと 楽する楽は 楽ならず 楽は苦の種 苦は楽の種
われとわが 心折々 省みよ 知らず知らずも 迷うことあり
花咲くは 実のなるためぞ 花にのみ 心やつして 実をば忘れな
慎みを 人の心の 根とすれば 言葉の花も 誠にぞ咲く
人の非は 非とぞ悪(にく)みて 非とすれど わが非は非とぞ 知れど非とせず
角もあれ 丸くもあれよ 人心 物に従い 事に応じて
人の世は われを何とも 言わば言え わが為すことは われのみぞ知る
何ごとも われ知り顔の 口たたき 詰めたる樽は 鳴らぬものかな
語るなと 人に語れば その人は また語るなと 語る世の中
恐るべき 鎗(やり)より怖き 舌の先 これがわが身を つき崩すなり
今日ほめて 明日悪く言う 人の口 泣くも笑うも うその世の中
慈悲じゃとて 施すものは 虚栄心 受ける者には 増す依頼心
稽古とは 一より習い 十を知り 十より返る もとのその一
習いつつ 見てこそ習え 習わずに よし悪し言うは 愚かなりけり
我を捨てて 人に物問い 習うこそ 知恵を求むる 秘法なりけり
古の 道を聞いても 習うても 身の行いに せずば甲斐なし
ためになる ことを言う者 忌み嫌い 毒をあてがう 人が好きなり
笛吹かず 太鼓たたかず 獅子舞の 後足になる 人もあるなり
わが身だに わがままならぬ 世の中に 思うままには ならぬ世の中
思うこと ひとつかなえば またひとつ かなわぬことの あるが世の中
ぶらぶらと 暮らすようでも ひょうたんは 胸のあたりに 締めくくりあり
痛き鍼 苦き薬に 熱き灸 苦しまんより かねて慎め

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