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資料館A 『身體髮膚、受之父母、不敢毀傷、孝至始也』
『身體髮膚、受之父母、不敢毀傷、孝至始也』
「身体髪膚、これを父母に受く。敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり。
身を立て道を行ひ、名を後世に揚げ、以て父母を顕はすは、孝の終りなり。
それ孝は親に事(つか)ふるに始まり、君に事(つか)ふるに中し、身を立つるに終る。」(孝経)
(現代語訳)
わが身体は両手・両足から毛髪・皮膚の末々に至るまで、すべて父母から頂戴したものである。
それを大切に守っていわれもなくいたみ傷つけないようにする。
それが孝行の始めなのだ。
立派な人物になり、正しい道を実践し、名を後の世までも高く掲げて、それで[あれは誰の子よと]父母の名を世に広くかがやかせる。
それが孝行の終わりなのだ。
いったい、孝行ということは、家にいて親に事えることが始まりで、家を出て君に事えるのがその中間で、[孝と忠とを全うして]立派な人間になるのが終わりなのだ。
この言葉で孔子が言わんとしたことは、フロイトが言った「死の欲動」と呼ばれる人間の「攻撃性」にかかわっている。
人間の攻撃性は、外へ向かえば他人への暴力になるが、それが自己に向かうとき責めさいなまれるような自責の念になる。
これは一種の強迫神経症である。
例えば、親への反発から現代の若者が自分の体に刺青やタトゥーを入れたり、リストカットしたりするケースを見ればよくわかる。
これに対して孔子はこの自分の身を傷つけるという生物学的エネルギーを、身を立て、名をあげることによって社会学的なエネルギーに昇華(負のエネルギーを正のエネルギーに転化)させるべきだと考えた。
これは基本的に20世紀のフロイトの精神分析の処方と異なるものではない。
こうした孔子の洞察力にあらためて驚嘆せざるを得ない。

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